静音ラックの設置アドバイス

静音ラックの導入結果に影響する設置条件や放熱について、よくある実例に基づいてコンテンツにまとめました。当社製品に限らず広く利用できる汎用情報です。サーバー運用でよくあるNGやその対処方法、対処製品などに導きますので是非ご利用ください。

設置場所

壁面へのベタ寄せは問題ありません。扉を90度まで開けるには壁から約20cm離してください。扉を180度まで開ける場合は壁から60〜70cmの距離が必要ですが大きなメンテナンスの時だけキャスター移動出来れば大丈夫です。
ラックの前後は放熱のために十分なスペースを確保してください。特にマシン規模が大きい場合やHPC、GPU搭載機では重要な項目となります。条件に満たない場合でもご使用いただけますが、その度合いにより機能損失は高まります。
 

部屋の広さ

静音ラックの導入でラック内のエアフローは完全な状態となりますが、ラックの周囲で悪条件があれば十分な性能は発揮できません。静音ラックの設置場所は出来るだけ開放的で広い場所が好ましく、周囲が閉鎖された狭い場所ではショートサーキット(排気熱の再循環)が発生してマシンの冷却性は低下します。
◆好ましい場所
 ・ラックの前後が解放的で排気熱の行先が部屋全体に分散拡散する場所
 ・フロア全体が広く十分な空気量があること
◆好ましくない場所
 ・パーティションで囲われた狭い場所
 ・部屋の角隅や3方向が壁で奥まった場所
 ・人員の居ない小部屋、倉庫
サーバーの放熱不良は多くの例でショートサーキット(排気熱の再循環)が原因です。排気熱の逃げ場がなく吸気側に熱が回り込んでしまうとマシン冷却は出来ません。ラック内部の対策としてはマウントしない部分にブランクパネルを装備したりNW機器の設置向き(エアフローの向き)を正しくする方法などを実施しますが、ラック外部でも同様に排気熱の適切な行先と行ってほしくない方向への対処が必要です。S8.0ZRのマニュアルには「ラックの前後を1m空けること」が記載されていますが、一概に単純ルールで白黒判断することではなく悪条件が多くなるほど連続的に放熱への影響が増大することになります。部屋の条件などにより完全な理想状態は難しいとは思いますがどの程度の損失があるかを認識することは重要です。「どの程度」を詳しく知りたい方はSi R&Dのサーバールーム無料診断や個別でのアドバイスをご利用ください。

 

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ラックの向き

メンテナンスを考慮した場合ではラック前面を手前広いほうへ向けた設置としますが、放熱を優先する場合はラック後面の排気側を手前に向けて解放された広い空間へ排気熱を分散拡散させる方法が望ましいです。この方法では多くの場合でラック前面のメンテスペースが不十分となりますが、Si R&Dの静音ラックではキャスター移動が容易なため、メンテのときだけ少し移動できれば問題ありません。18U程度までのラックであれば移動の自由度はあります。24Uなどの大型製品や耐震固定などの場合では個別にアドバイスを用意いたします。

空調適合(空調馬力の計算)

マシン規模が大きく部屋が小さい場合には建物の空調馬力を考慮しなければなりません。
サーバーで消費される電力はほぼ全てが熱になりますのでHPCマシン1台あれば「電気ストーブ1台分」のイメージとなります。それが複数台ある場合や高発熱のGPUマシンでは「ストーブ何台分?」となるような規模感です。単純な数値比較としてはサーバーが実際に消費する電力(kw)を超えた空調規模(冷房能力〇〇kw)がないと運用困難。
・空調の「馬力」は単純な係数、「エアコン能力2.8kw=1馬力」です。
・エアコン能力は室外機に「冷房能力〇〇kw」などと表示されています。

そしてマージン(余力)補正をどれだけ加算するかが重要。部屋の熱量と空調機器の選定には専門的な計算がありますが空調業者だけに頼っていては不全。サーバー運用ではそれに加えてエアフローの状態やマシンの実態的な負荷状況、将来の増設などを考慮することが必要です。重視すべき要因、省略できること、状況は様々であり単純で画一的な公式が無いことが難易度高めます。経験や実績で大きな差異が出ますので当社に蓄積されたノウハウを是非ご利用ください。諸条件の優先順位を即座に判断して俯瞰的な全体策定に導きます。

部屋全体のエアフローとエアコン形状

サーバーラックと空調機の位置関係が重要であり不適切な場合にはマージン加算を多く必要とします。HOT、COLDが混ざり合わない一方通行の流れになればマシン吸気温度は下げられます。

言い方を変えると
「エアフローを整えれば全体規模とランニングコストは縮小出来る」
「エアコンでガンガン冷やせば不適切な要因があっても補える」
お客様の諸事情によりどちらの場合もあります。理想は前者ですがそうならないことも多いのでデメリットをどれだけ把握しているかが重要です。

 

◆マシン冷却に理想的な3条件
<COLD側>エアコンの冷気がマシン前面に向かうこと
<HOT側>マシンの排気熱がエアコンのリターンに戻ること
<ショートサーキットの防止>排気熱がマシンの吸気側へ流れないこと

 

これらの3条件を満たすには1方向吹き出し型や床置きタイプなどの空調機で好条件が得られます。4方向吹き出しの埋め込み型ではHOT、COLDが混ざり合い常に高め温度でのマシン吸気となります。

 

発熱量

サーバーで消費される電力はほぼ全てが熱になりますので、HPCマシン1台あれば電気ストーブ1台分のイメージです。それを何台も重ねて一か所に集めればどんな事態になるか容易に想像出来るでしょう。さらに周囲をパーティションで囲ったりしたら凄まじいことに!しかしそのような症例は数多く見られます。HPCや特に発熱の多いGPU搭載機にどれだけの熱対策が必要かを十分にご考察ください。
例としてSupermicroのGPU×8基搭載のマシンを3台(4U×3台=12U分)入れた場合では10kwぐらいの発熱になります。1500Wの電気ストーブ6台分!です。馬力計算では3.57馬力となり通常では100uぐらいのフロアに用いる空調規模、それを一か所のラック1uぐらいに使おうとする訳ですからどれだけ重大で特殊なことであるかを考える必要があります。

電源

マシンの消費電力と同じくらいの空調電力を使いますのでご注意ください。適切なエアフローやラック内の整備を十分に策定すると省エネにも繋がります。当社へご相談いただければシンプルでスマートな策定をサポートいたします。

床の耐荷重

多くの建物で床の耐荷重制限があります。1uあたりに何kgまでとルールがありますので、例えば高さ2mの42UラックにHPCマシンをフルマウントするような使い方は出来ません。マシンの総重量が200kg程度まででしたら一般的に問題は発生せず300kg400kgとなるようでは対策が必要になる例が多いです。静音ラックとの組み合わせ導入例では24Uや30Uぐらいまでがよく用いられるちょうどいいサイズです。複数台のラックを用いて配置を分散させると放熱にも有利になります。

冬の暖房

「冬はビル全体で暖房しか使えない」と相談を受けることがありますが、サーバーの放熱問題とは無関係です。夏の室温が28度ぐらいで最も過酷、冬に暖房が入ってもそれ以上の室温になることは有り得ませんので冬のほうが好条件です。サーバーが熱いのはショートサーキット(排気熱の再循環)など根本的な問題があるからであり、それらを解決しないまま因果関係の曲解となっては道を誤ります。当社へご相談いただければ理にかなったスマートな解決を用意いたします。

「マシンの間を1Uづつ空ける」は逆効果

静音ラックのマシンマウントは基本的に下寄せ、マシンの間は空けずに下へ詰めます。最下段は配線余長の収納スペースとしてブランクパネル、その次に重たいUPS、サーバー本体を下寄せでマウントし上部背面にNWスイッチなどの順番になります。低重心化での転倒防止が理由です。よく見かけるのがマシンごとに1Uづつ空けるマウント。理由を聞くと「風通しを良く」との答え、いえいえここは放熱とは関連しませんし逆に冷却性は悪化しますので皆さん要注意です。
マシンの天板や底板には放熱する仕組みはありません。熱は筐体内部の風の流れで背面へ放出されます。マシン上下に隙間を空けても放熱性は上がりませんし逆にショートサーキットの流路となってしまいます。マシン前面は吸い込みにより常に負圧、背面は排気により正圧ですので風の流れは正→負へ向かいます。どうしても1U空ける理由がある場合(※)はブランクパネルで仕切りを入れてHOT、COLDが混ざらないようにします。
※例:Supermicro SYS-4029GP-TRT2(4U)は天板に突き出した部分がありますので5U占有となります。

サーキュレーターで冷やす

「ラックの後ろが熱いので扇風機やサーキュレーターを向ける」、、、これもよく見かけるNGがあります。後ろから前へ風を当てればショートサーキットを助長して逆効果です。サーキュレーターを使うのであればラック後面上部から排気熱を吸い出し遠くへ飛ばす向きに設置してください。

夜間の空調停止

夜間に空調を止められてしまう建物は多いですが室温が朝までに35度を超えてしまうような部屋はほとんどありません。しかしそれでもサーバーの放熱不良が起こるのはラック内が日常的に温度上昇しているからです。一般的なラックでは必ず放熱不良が発生しています。いつも35度ギリギリの温度では生活室温(28度)から少しでも室温が上がればすぐに限界を超えてしまいます。
エスアイ静音ラックは騒音密閉をするためにラック内のエアフローを完全な状態としますのでマシン吸気の温度上昇は一切発生しません。室温が28度であれば危険温度35度に至るまで7度ものマージンがありますので室温変動にも余裕をもって対応できます。多くの導入例で静音ラックにより冷却性が上がったと評価されています。低い温度での運用はマシン寿命にもメリットありますので長期的なアドバンテージも得られます。

 

お問い合わせ

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